アーティスト語と公務員語 その2

こんにちは。ふじまるです。私は公立の美術館で学芸員をしています。

今日はどんな1日でしたか? 私は朝、大きな空の下を散歩しました。私の家の周りには電線がなくって、見上げると、もう空しか目に入ってこないんです。素敵でしょ。そんな空の下を散歩したので、とてもいい日でした。

さて、今日は昨日続き、私の仕事場は美術館なのに、標準語がアーティスト語ではなくて、公務員語なのはなぜ? というお話をします。

美術館なのに公務員語で仕事ができるの? 

という不思議がありますが、むしろ公務員語でなければ仕事はスムーズに進まないのです。これには訳があります。それは、公立の美術館は、決定権の全ては学芸員ではなくて、役場の職員にあるからです。

役場の職員は庁舎から入れ替わり立ち替わり2、3年交代でいろんな職員が異動でやってきて、異動で去っていきます。学芸員の方が長く美術館で仕事をしていることが多いのですが、でも、役場の職員は「中央からの使命を帯びた存在」であり、学芸員は「現場仕事の端末の存在」なんですね。これは大袈裟に言っているわけでも、ディスってるわけでもなく、単純にそういう構図なのだということを言っているわけです。なので、学芸員は提案する権利こそあれ、最終的な決定権はありません。企画の内容を役場の職員が決定することもよくよくあります。

お給料のことを言いますと、学芸員は中央から派遣されているお役人の多分半分ぐらいです。ちなみに私の手取りのお給料は15万円チョイです。まあ、福利厚生がしっかりしているので、それらを差し引いて、という額ではあるのですが、でも15万円ではいい歳をした私は生活していけません。

私自身、自分の仕事を鑑みてみて、15万円の倍以上の仕事量と質をこなしていると胸を張って言えます。うん、私はすごくいい仕事をしている。

じゃあなぜそんなお給料で続けているの? というと、すんごく勉強になるからです。世界を舞台にして活躍するアーティストと一緒に仕事ができる喜びはお金を積んでもなかなかできません。あのね、本当にね、世界で活躍する方は違うんですよ。こんな仕事をしていなければ絶対に目を合わせて話をする機会なんかないそんな方から、ものすごくいろんなことを教われるのですよ。

でも、それもある一定の期間、3年ぐらいかな? うんと刺激的でドキドキしながら学べるのも。それを過ぎると、アーティストに鍛えられた学芸員にはかなりな能力がついていますから、ちょっと次のステップに行きたくなります。次に行きたくならない、という段階であれば、まだまだ勉強していてもいい期間だということです。

さて、話がそれました。なんの話をしてましたっけ? 

そう。美術館なのに、なぜ標準語がアーティスト語じゃなくて公務員語なの? というお話でした。
明日は、「アーティスト語と公務員語の違いはなんなの?」というお話をします。

それではみなさん、また明日。